習慣になるのは 殆どがパチ・スロ

2・殆どの習慣性依存は パチンコとスロットから

それでは、多くの依存症ギャンブラーが陥っている習慣性依存とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか? そのことを考える前にまず、ギャンブル依存症の対象として大勢を占めるパチンコとスロットについて論じなければなりません。

実際に私がこれまでに相談をお受けした方の殆どが、パチンコとスロットへの依存者とそのご家族です。そういった事実からも、日本におけるギャンブル依存症を語るのにパチ・スロというギャンブルについてちゃんと知っておくことは極めて大切なことなのです。

その理由についてですが、パチ・スロは他のギャンブルと大きく違った特徴を持っているのです。まず今回は、その特徴についてお話しさせていただきましょう。

ギャンブルにはいろいろと種類がありますが、一番依存しやすくかつ克服しにくいのは、間違いなくパチンコとスロットです。その一番大きな理由は、設置台数と店舗の多さです。日本国内に存在するパチンコ店は2015年7月現在、約10400店あるといわれています。(警視庁の調査による)全盛期は17000店くらいありましたから、これでもまだかなり減った方ですが、それでも他の国では考えられないくらい多く存在しています。

その次の理由として挙げられるのは、パチンコとスロットの営業時間と開催期間が他のギャンブルに比べて圧倒的に長いことです。パチンコ店は朝10時に開店し深夜にならないと閉店しないばかりか、週に1日くらいしか休店日がありません。ベガスなどのカジノは年中無休24時間営業ですが、こういった状況は本場のカジノさながらといえます。

しかもパチンコとスロットは、1回の勝負の決着がつくのに多くの時間を費やします。その理由はは、デジパチの1回転・スロットの1プレイが実際は1回の勝負であるにもかかわらず、大当たりが来て確変消化など一連の結果が出るまでが1回の勝負であると考えられる風潮があるからです。実際ホールの中を見ても、千円分の玉やコインを使っただけで「勝負は終わった」などと言って帰る人など、まず居ないでしょう。殆どのプレイヤーたちは、最低1回の大当たりを拝んでから帰る筈です。

同時に前兆や潜伏などといったややこしい演出が多いことも、遊戯する時間を引き延ばす大きな原因の一つです。パチンコにせよスロットにせよ、遊戯する時間に比例して売り上げが上がる仕組みになっていますので、ホールもメーカーもいろいろな方法を駆使して客を長時間引きつけておこうとします。当然ながら、遊戯時間が長くなるほど習慣化しやすいといえます。

一方でパチンコ店や機種の宣伝はテレビやラジオで流されていますし、毎日のように広告のチラシが新聞に入ります。今の日本は世界一、ギャンブルが多く誘惑されやすい国なのです。

  • 店舗数・設置台数が多い
  • 生活圏に存在している
  • 営業時間が長く、ほぼ毎日営業している
  • 時間がかかるギャンブルである
  • なかなかやめさせてくれないギャンブルである
  • 日本国中、至る所に誘惑とワナが存在する

これらの理由から、習慣性依存になるのは殆どがパチンコとスロットに依存している人たちといえましょう。行く頻度が高くプレイ時間が長いギャンブルほど習慣になりやすいのは、至極当然のことなのです。パチ・スロをすることが、なぜ習慣となりやすいのか? その答えをひとことで言うならば、パチンコとスロットには習慣になりやすい要素が満載だからです。

しかも問題はそればかりではありません。パチンコとスロットは手軽な割にレートが高いです。交換率にもよりますが、通常レートならば1時間に 4000円から5000円失うのが還元率からみた相場です。勝ち負けにかかわらず座っているだけでそれだけのお金を失うのですから、いかにパチンコとスロットが高価な遊びかということが分かります。

このようにパチンコとスロットへの依存は習慣性になりやすく、引き起こす問題が甚大です。しかも誘惑が多く、依存を克服するのが難しいともいえます。そういった理由から、習慣性依存問題はパチンコとスロットに絞って対策を立てなければならないということになります。

 ・パチ・スロ依存者の毎日

ここでちょっと、パチンコとスロットに依存した人の一日を考えてみましょう。朝、目が覚めると一番に気になるのは、今日打つ予定のパチンコ台のことです。もしもその日が平日なら、退社後の行動を朝から計算し始めます。どうすれば仕事を早く切り上げて会社を出られるか、頭の中はそのことでいっぱいです。

退社の時間になると、同僚の誘いなど目もくれず、足はパチンコ店へ一直線です。パチンコ店へ向かう道中は、狙いの台で大勝ちするという期待で胸がいっぱいです。ですがそういった期待は、殆どの場合裏切られます。

パチンコ店から家へと向かう足取りは鉛のように重く、今日はどうやって妻に言い訳しようかと、今度はそのことで気が重くなります。多少の違いはあるかもしれませんが、パチンコやスロットに依存した会社員の日常は、だいたいこのような感じでしょう。

よく考えてみれば、呼吸するがごとくパチンコ台のことを気にし、闊歩するがごとくパチンコ店に足を運び、コンビニで雑誌を買うよりも気軽な気分でサンドに千円札を挿入する。そして帰りは空財布となり、足取りも重く家路につく…。これでは身も心もボロボロになって当然です。

そういった行動が習慣となってしまうのですから、いかにパチンコとスロットへの依存が恐ろしいか分かるでしょう。しかしながら、問題に気付き「これではいけない!」と思っていても、パチンコ店に通う人が多いです。

パチンコやスロットが好きでもなく、ただ漫然と心の隙間を埋めるだけのために台の前に座って居る人は、パチンコに行くという習慣から抜け出すことができない人ともいえます。そしてそういった人ほど、後々大きな問題を抱え込むケースが多いのです。(続く)

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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