・まずは 心の力に頼らないこと
私は前回、「まず最初にギャンブル依存症克服に特化した生活環境の改善を行い、それでも足りない部分について生活習慣を改善するというのが、最も効果があり効率的な金銭管理法なのです」と書かせていただきました。
その理由についてですが、できる限り心の力に頼らず最低限の努力でギャンブル依存症を克服するためです。このようなことをお話しすると、「不謹慎だ!」とか「努力を否定している!」とか「やる気がない方法だ!」とか「手抜きかい?」などとおっしゃる方が居らっしゃいます。ですが、そうではありません。ヤル気が出にくい心の病だからこそ、そういった方法に頼らざるを得ないのです・・・。
依存症ギャンブラーのウイークポイントは、ギャンブルに心を支配されているということです。つまり「ギャンブルするかしないかを、自分の意思で決める」という、健常者なら当たり前のことができない状況なのです。別の言い方をすれば、マインド(心の力)に頼る方法はあてにならないということでもあります。
ギャンブル依存症を克服するには、ちゃんとした自覚を持って一定の時間を稼ぐ必要があります。目的から考えるならば、何よりも注意しなければならないのは「ちゃんと継続できる方法・手段かどうか」ということです。そういった点を重視するならば、不安定な部分をできる限りなくして確実な方法を取り入れるのが当然でしょう。
・習慣性依存という難題
少し習慣の話から外れますが、ここで少しギャンブルに依存するきっかけについてお話させていただきましょう。
私の考えですが、ギャンブル依存症のトリガー(引き金)は3つあるようです。第一は、金銭に対する感情です。それはビギナーズラックであったり、大切なお金を失った悔しさだったりするのですが、根本にあるのは勝ち負けのギャップによって生み出される「心の葛藤」といえます。金銭への感情が原因のトリガーは、瞬間的に引かれる場合が多いです。
第2のトリガーとは嗜好です。好きだから始めたものの次第に行く頻度が高くなり、ブレーキが効かなくなってしまうといったケースです。そういった状態から金銭問題や家庭・職場内の問題などが発生し、初めて依存に気付くという場合が多いです。ギャンブルはそもそもお金をやりとりする遊戯なので、やり過ぎるとまず間違いなく 数々の問題を引き起こします。嗜好によるトリガーも、比較的短期間で引かれるように感じます。
そしておそらくですが、第3番目のトリガーとは習慣によるものです。長い年月を経てギャンブルをするのが習慣になり、抜け出せなくなるケースです。習慣が身に付くには、多くの時間が必要です。そういったトリガーは、本人が気付かないうちにゆっくりゆっくりと引き 絞られたといえるでしょう。原因別に考えてみると、依存してしまうまでの期間に差があることに気付きます。
さて、ここで話を元に戻しましょう。生活習慣の改善が困難な理由として、先に私は次の2つを挙げました。
- 本人の心の力に頼らざるを得ない
- 継続して行う必要がある
ところが実際には、もう一つ厄介な問題があります。それは、「習慣性依存」というものです。簡単な日本語で言い表すならば、それは「癖(へき)」という一文字でしょう。巷でちょくちょく「クセになる…」というフレーズを目にしますが、まさに「クセ」そのものです。
ギャンブルにおける習慣性依存とは、「ギャンブルすること自体が、一つの習慣(クセ)になっている」というケースです。私がこれまで見てきた依存症ギャンブラーの半数以上が、習慣性依存だったといえます。習慣性依存とは、先ほどお話しした第3番目のトリガーによって引き起こされる問題です。
金銭に対する感情というのは、時間が解決してくれるといえます。嗜好を変えることは難しいのですが、これも時間をかけて諦めれば問題ありません。
ですが「ギャンブルする習慣」を無くすというのは、考えている以上に苦痛を伴うことなのです。その大きな原因として、そういった習慣が長い年月を経て身に付き、かつ多大な時間を犠牲にして成り立っていることが挙げられます。
あなたも経験されたかもしれませんが、ギャンブルを断ってみて一番に気付くのは、何もすることがないという寂しさとやるせなさです。そう感じてしまう一番大きな原因とは、ギャンブルそのものが既に習慣となっていることなのです。(続く)