克服のルール その1

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・「やめる」という言葉の意味

ここでは、「ギャンブルをやめる」ということが実際にはどういったことなのか考えてみたいと思います。なぜなら、「やめる」とひとことでいっても、ギャンブル依存症の場合、考えておくべきことがたくさんあるからです。あなたに、やめることの本当の意味を知っていただくことは重要です。

・何をやめるのか
・いつやめるのか
・いつまでやめるのか
・どのようにやめるべきなのか

例えば「何をやめるのか?」と問われれば、きっとあなたは「そんなのギャンブルに決まってるじゃないか!」とおっしゃる筈です。ですがそれは正解でありながらも、正確な答えではありません。

私は先にギャンブル依存症の特徴について、金銭に対する感情が大きくかかわっていると書きましたが、実はもう一つ大きな特徴があります。それは、「殆どの依存症ギャンブラーが、偏って依存している」ということなのです。

例えば、「パチンコへの依存者が、必ずスロットの依存者である」というわけではありません。とはいっても、パチンコ・スロット双方に依存している人も中にはいます。競馬に依存していて、他のギャンブルには一切手を出さない人もいます。こういった依存対象への偏りは、あなたと他のギャンブラーとを比べてみれば、容易に理解できることでしょう。依存症ギャンブラーは、それぞれ依存するギャンブルの種類も数も異なっているのです。

・何をやめるのかが問題

ここで先の問いに戻りますが、あなたが今やめるべきなのはいったい何なのでしょうか? これはSAGSの中でも、しばしば論争になることです。自助グループの中には、「株式投資などの投資や宝くじなども含め、全てのギャンブルをやめるべきである」としている所もあります。ここであなたがもしもパチンコに依存しているというのであれば、「それはパチンコです」とおっしゃるかもしれません。

ですがそれは不正解です。なぜなら他のギャンブルに手を出したとき、あなたが依存しないという保証など全くないからです。事実、競馬では依存していなかった人が、パチンコに手を出した途端依存したという報告をいくつか聞いています。勿論、逆もあり得るでしょう。

ゲーセンで「賭けていないんだから、いいじゃん!」とばかり、置かれてあるパチンコ機やスロットマシーンで遊ぶ方が居ます。ですがそれだけで収まらず、一層大きな刺激が欲しくなる場合が多いです。ゲーセンがきっかけで、スリップしてしまったり再発してしまったりしたという例をよく見かけます。

また逆のケースでは、「パチンコに依存していた人が、たまたま宝くじを買ったことが原因でスリップしてしまった」という話は聞いたことがありません。少し話が変わりますが、SAGSでは参加するときに「依存しているギャンブル」を明記していただいています。それ以外のギャンブルに手を染めたとき、それをスリップにするかどうかは参加者さん本人に任せているのです。

あなたはそういったことも含め、今後何に気をつければよいのでしょうか?

この質問に対する正確な答えを知る人は、少ないように感じます。なぜなら、依存対象が偏る原因と取るべき対策について詳しく書かれてあるサイトや文献が見当たらないからです。

ここで大切なことは、あなたが依存しているギャンブルをやめるということだけではありません。肝心なのは、「自分が依存しているギャンブルはやめ続け、その他のギャンブルには今後一切手を出さない」ことなのです。このことを心がけるだけで、将来他のギャンブルに依存する危険性を大きく減らすことができます。

それと先にも書かせていただいた通り、ゲームセンターでの遊戯は金がかかっていないとはいえ、やらない方が無難です。特にスロット依存の人がゲームセンターでスロットの実機をプレーすると、スリップしやすく注意が必要です。ゲームセンターのパチンコ機・スロットマシーンなどを我々は「フェイク(幻)」と呼び、やらないよう皆さんに呼びかけています。

何かギャンブルに依存したのであれば、今後はゲームセンターも含め、怪しげなギャンブルやゲームには一切手を出さないことと心得てください。あなたが、ギャンブルによって感情を操られてしまったという事実を、決してお忘れにならないことです。

ただし、ギャンブルと投資の線引きやギャンブルの定義については、解釈が難しく意見が分かれるところでもあります。このあたりのお話を詳しくすると、1冊の本くらいの量になってしまいますので、またの機会にお話しさせていただきましょう。(続く)

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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