賭博場への入場制限は 有効か?
貧困と大きくかかわりその原因となっているパチ・スロだが、今のような状況は今後改善されていくのだろうか?
私は全く楽観できないと感じる。逆にこのままでは、パチ・スロによってもたらされる貧困問題がさらに加速する可能性さえ有ると考えるのである。
以前に私は、パチンコが今後衰退していく可能性について書いた。「教える人が減るのであれば、麻雀同様にパチ・スロも衰退するであろう」と。
だが仮にパチンコ業界が衰退していくとしても、それまでパチ・スロに興じていた人たちがギャンブルをしなくなるという保証など全くない。
つまりパチ・スロが衰退したとしても、ギャンブル人口が減るという保証は全くないのである。なぜなら、今後予想されるギャンブル行政に、根本的な問題解決の道筋が全く見えてこないからである。
今現在、「依存症ギャンブラー本人や家族による届けがあれば、賭博場への出入りを禁止する」という入場制限制度を設けるという計画がある。
そういった政府の姿勢に一定の理解を示す民意も存在する。だが、私は根本的な問題解決になっていないと感じるのだ。その理由について、説明していこう。
根本的解決は 賭け額の総量規制だけ
1年前に国会で、依存症ギャンブラーの入場規制に対する興味深い質問があった。興味深いのは質問の内容では無く、その質問に対する安倍総理による答弁である。
“「家族の申告により申告対象者のカジノ施設又は公営競技場若しくは場外券売場への入場制限を行う場合、目視で識別することは困難だと考えますが、政府の見解を伺います」”(平成三十年三月九日提出 質問第一三九号 ギャンブル依存症者の入場制限と個人情報保護の関係に関する質問主意書 提出者 初鹿明博より抜粋)
“「一方、ギャンブル等へののめり込みによる被害から利用者本人及びその家族を守るためには、ギャンブル等依存症の診断を受けているような利用者に対してサービスの提供を拒否する仕組みを構築していくことが適切であると考えており…」”(安倍晋三総理の答弁より抜粋)
つまり政府としての見解は、あくまでギャンブル依存症であると診断された人物に対する対策のみであって、ギャンブルそのものの総量規制(賭け金上限規制)に言及する物ではないといえるのである。奇しくも、この質問への答弁でそのことが明確になったわけである。
ハッキリと言わせていただくが、ギャンブルに依存した人のうち一体何%の人が医療機関を訪れるのだろうか? 我々SAGSにおいても、参加者の大半が医療機関を経ずに自ら問題を解決しようと励んでいるのである。
医療機関を訪れてギャンブル依存症であると診断された人物のみを対象に、そういった対策を講じても全く焼け石に水である。
ギャンブルに起因する貧困などの社会問題を無くしていくために最も大切なのは、実は依存者対策ではない。ギャンブルその物の制度を改革することなのである。ズバリ言うならば、それは賭け額の上限を設ける「総量規制」のみなのである。(続く)