今一度スリップについて おさらいしようか

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依存症ギャンブラーであるならば、「ギャンブルやめます!」と宣言してやめるのが常である。ここでいう「やめる」を、ちょっとお堅い言葉で表現するならば、恒久的不可逆的にやめねばならない。

この言葉を簡単に説明するならば、「やめると言った限り、一生やらない」ということだ。だが、このことがいかに難しいか、既にあなたならご存じのことだろう。

なぜ今更 スリップの記事なのか

実は私がこの記事を書こうと考えたのには理由が有った。我々SAGSの中で、断ギャンブル期間が1年以上の方のスリップが相次いでいるのである。

最近になって、1年以上の断期間を経た人が何名かバタバタと出戻ってこられた。ようは、ロングヒッターたちの出直しである。

そういった方々を拝見して感じたが、スリップする理由は何も誘惑とか衝動とかだけでは無い。全員に共通しているのは、問題意識が希薄なことである。

ひとことで言えば、「スリップした結果、どうなってしまうのか」が理解できていない。スリップすることは、ある意味命がけの行為である。そのことが理解できていない。

しかもひとたびスリップすれば自分のみならず、家族や周囲の方々をも巻き込んで不幸にしてしまう危険をはらんでいるのだ。そういった恐ろしい現実から、目を遠ざけている。

少しの間、断ギャンブルしただけで目に鱗が付いてしまったかのごとく感じる。これは由々しき事態ではないか。

ここは一つ、おさらいをしておく必要があるだろう。

スリップする理由は 断ギャンブル期間によって大きく変化

これまでのことを考えると、SAGS内において断ギャンブル期間が1年以上の方がスリップする確率は極めて低かった。

以前にデータを取ったことがあるが、2年くらいの間にスリップした人1429人。その中で、1年以上の断期間を経てスリップした人は13人だけだった。確率にすると、およそ1%である。

もっとも、恥かしくてスリップ報告できなかった方も居られるだろうから、実際はもう少し多いかも知れない。

そういったこともあって、これまでから私は参加者の方々に「まずは、後ろを振り向かずに1年間の断ギャンブルを達成してください」と言い続けてきた。またテキストの中でも、同様の事を書いている。

ところが最近になって、こうも多くの方がスリップしたということで、少し考え直す必要が生じてきたとも感じる。ここで一つ思い当たるのは、スリップにおける「無知のリスク」であった。

スリップする5つの原因とは

既にSAGSのテキストをお持ちの方であればご存じだと思うが、スリップする原因は主に次の5つに分類される。

※金銭管理
衝動
誘惑
油断
ストレス

それと同時に、それまでに達成した断ギャンブル期間によって、これら5つの原因が占める割合が大きく変わっていく。特に顕著なのが金銭管理で、断ギャンブル期間3ヶ月未満の方がスリップする確率の4割くらいがこれである。

ところが断ギャンブル期間3ヶ月以上の方がスリップする原因となると、油断とストレスが大勢を占めている。

このことから考えられるのは、「金銭管理さえできないのであれば、断ギャンブル3ヶ月超えるのは難しい」ということだ。逆にいえば、3ヶ月達成した人は、ほぼ金銭管理ができているともいえる。

時間が経つにつれ増すリスク

よく考えてみれば、この金銭管理というのはあまり時間的な要素がない。例えば手持ちのお金を減らす工夫や家族に金銭管理してもらうといった工夫は、時間が経てば無効になるとも思いがたい。

※ちなみに、「時間が経つにつれ金銭管理をシッカリとしなくなる」というのは、金銭管理では無く「油断」として我々は分類している。

ところが衝動や誘惑、ストレスや油断といったものは、時間が経つにつれ遭遇する可能性が高くなりスリップの大きな原因となる。私はこれらのものを、「時間的リスク」と呼んでいる。

時間的リスクの中には、もう一つ重要な項目が一つ存在する。それが今回のシリーズのテーマともいえる、「無知のリスク」である。(続く)

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奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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