さて今日はまず、ここに居られるあなたに一言お聞きしたい。「ギャンブルを断っているという状況は、精神的にいうとどういう状態ですか?」きっと答えは様々だろう。
中には、「ギャンブル自体、忘れてしまった」という強者も居られるだろうし、「日々が我慢です」と仰る方も居られるに違いない。だがどういったマインドをお持ちであれ、断日数を重ねている方は間違いなく、「やめ続けている」わけである。
不可能なマインドセット
これまでお目にかかってきた方々を観察して感じるが、どうやら可能な※マインドセットと不可能なマインドセットが存在するようである。というか、挫折しやすいものと長続きするものが存在する。例えば、「ギャンブルを嫌いになる」というマインドは、殆ど実現できない。(※マインドセット:特定の目的のため、意図的に自らの精神を導こうとすること)
あなた自身を含め、これまで失敗した方々のことをよく思い出して欲しい。「嫌いになろう!」と星の数ほど多くの人々が幾度となくチャレンジを繰り返し、散っていったという歴史が存在してはいないだろうか。
なぜ嫌いになろうとすることが、ギャンブルをやめることにつながらないのか? その理由は明白である。嫌いになるということ自体、人間自身がコントロールできる感情ではないからだ。
では、「ギャンブルのことは忘れてしまおう」というのはどうか? 実はこれも、ほぼ不可能なマインドセットである。
人間は意図的に自らの記憶を無くすことができない。記憶を無くすのは、時間とその後の生き方に託すしかないのである。
私自身が挫折から学んだこと
よく考えてみれば、これら2つの方法は自分の力で感情や記憶をコントロールしようとする方法である。この私がこのことに気付き始めたのは、10年ほど前のことだった。
まず最初に考えたのは、「ギャンブルを嫌いになることができるか?」という疑問だった。この疑問に対し、当時の私は胸に手を当てて考えた挙げく「NO!」と答えた。というか、当時どころか今現在の私だって、パチ・スロは大好きなのである。
もしもこういったマインドの私を批判する方が居られるのなら、おそらく問題の解決点から遠い方だ。ひとたび好きになった物を嫌いになれるほど、人間の心は強く出来ていないのである。
パチ・スロのことを忘れようと努力を重ねたこともあった。だが私の知る限りでは、今の日本でパチンコ店が無いのは兵庫県の芦屋市くらいである。近年になって広告は減ってきているが、相変わらず投げ込みチラシは多い。残念ながら、誘惑だらけの環境は今後も変わらないだろう。
私は今でも、頻繁にパチ・スロの夢を見る。そして目を覚ましたとき、自分自身が断ギャンブルの最中だったことに気付いてハッとすることもしばしばだ。(続く)