それでは、なかなかそういった刺激やデトックスに出会えない人は、一体どうすれば良いのだろうか? ここで私が提案するのは、経済的な不安から逃れてしまうことである。
これは何も、「これまで以上に稼げる仕事を探しなさい」ということではない。「ギャンブルしなければならない理由と決別するのである。
依存症ギャンブラーが陥る2つの錯覚とは
健常者が聞けば笑える話かも知れないが、依存症ギャンブラーは、「ギャンブルをやめると、一層ひどい経済危機が訪れる」と考えている場合が多い。その理由となっているのは、「やめてしまったら、これまでの負けを取り戻すチャンスを失ってしまう」という妄想である。
こういった思考は失った金が大きい人ほど強く、別の言い方をすれば「※サンクコスト」次第と言えるのかも知れない。断じて言うが、ギャンブルで失った金は全てサンクコストである。
※サンクコスト: それまで自分が行ってきたことに対して費やした投資額のうち、回収ができないもしくは困難な費用のことをいう
ここで問題になっているのは、「ギャンブルの負けをギャンブルで取り返そうするマインド」と「ギャンブルで得る金をあてにするマインド」である。
これら2つのマインドは依存症ギャンブラーのみが陥る錯覚といってよい。依存の根底に流れている狂った金銭感覚は、殆どがこれら2つの錯覚が起源になっている。
「行く理由」を取り除くことは可能か?
そしてもう一つ難儀なのは、依存症ギャンブラーが「経済的に困っているから、今はやめられない」と考えてしまうことだ。しかしながら、これは何とかしやすいマインドである。
ギャンブルの負けをギャンブルで取り返そうするマインドは、一朝一夕に取り除くことはできない。同様に、ギャンブルで得る大金を当てにするマインドというのも早々簡単には無くならないだろう。
おそらくだが、これら2つの呪縛から逃れることができるのは、断ギャンブルを始めてから数年先である。
だが、「経済的に困っているから、今はやめられない」と考えるのは、速効で修正可能な場合が多い。例えばカミングアウトして家族に一切の金銭管理をお願いすれば、それで解決する。
カミングアウトは敷居が高い物だが、思い切ってやった結果、「肩の荷が下りました」と話される方が多い。その理由について聞いてみると、「これで、お金の心配をしなくて良くなりました」とか「これからウソをつかなくてすみます」とか、人によっては「もうパチンコしなくて良いと思うと、気持ちが晴れました」と仰ることがある。
これらの方々の気持ちを代弁させていただくなら、「行かねばならない理由が無くなった」ということだろう。(続く)