新たな目的がない「断」は成功しない

2・「改善」だけが目的では モチベーションが保てない

これからお話することは、先の章で書いておくべきことだったようです。しかしながら、ギャンブル依存症を克服する上で不可欠といえる要素なので、遅ればせながらお話しさせていただきましょう。

さて、復習の意味で書かせていただきますが、ギャンブル依存症を克服するために必要なこととは一体何だったでしょうか? よーく、思い出してみてください。それは次の3つだったと思います。

  1. 自らの依存を(ちゃんと)自覚すること
  2. 生活環境と生活習慣を変えること
  3. 人間関係を構築すること

それではこれだけのことができれば、成功間違いなしなのでしょうか? 確かにギャンブルをやめることだけに特化していうならば、あなたは目的を果たすことができるかもしれません。ですが、ここで少しだけ考えてみてください。

殆どの依存症ギャンブラーが抱えているのは、ギャンブル依存症によって引き起こされた金銭問題や家庭内の不和などといった「悩み」というものです。きっとあなたも、そうではないでしょうか?

ですが断ギャンブルに成功して金銭問題からおさらばできたとしても、それは普通の人と同じ金銭感覚になったというだけです。パチンコしなくなって、まじめに仕事をするようになったとしても、あなたは同僚と同じ条件になっただけです。

奥さんの家事を手伝って休日の買い物に付き合えるようになったところで、それは世間一般の夫になっただけです。つまりこれでは、「スタートラインに戻っただけ」といえないでしょうか? なんだか、モチベーションが上がらないですよね・・・。

しかも、金銭問題から解放されるといっても借金の完済には時間がかかりますし、人間関係や仕事面などでギャンブル依存症によってもたらされビハインド(後れを取っていること)はたくさん残っていると思います。

なんだか、いきなりあなたのヤル気を一層そぐようなことを申し上げてしまいましたが、実際はそれが現実です。つまり、ギャンブルをやらなくなっただけでは、全て問題解決といえないのです。

・出発点は悩みでも

考えてみれば依存症ギャンブラーというものは、悩みを持つからこそ自らの問題に気付き何とかしたいと願い始めるのです。あなたにとっても当初の目的とは、悩みの解消だったはずです。ですが、そもそも悩みとは何でしょうか?

それは通常の場合「存在しない筈の不都合」であり、決して前向きなものとはいえないでしょう。つまりラッキーではなく、アンラッキーです。つまりあなたは、アンラッキーから出発したといえるのです。

悩みというものはマイナスのことなので、たとえそれが解決したところで通常の状態に戻るだけです。そしてもう一ついうならば、ギャンブル依存症を克服する上においても、こういった部分に大きな落とし穴が存在するのです。多くの人が同じ箇所で躓いてしまいます。

ここであなたに、はっきりと申し上げておきましょう! 新たな目的のない断生活は、長続きしにくいです。なぜなら、「ギャンブル依存症を克服して、こうなりたい!」というビジョンがないと、モチベーションが保てなくなってしまうからです。

意外なことですが、ギャンブル依存症を克服したいと志したとき、既にあなたには「克服の次の目的」が必要なのです。ここは重要な部分なので、再度書いておきます。

「ギャンブル依存症を克服して、こうなりたい!」というビジョンがない断生活はモチベーションが保てず挫折しやすいといえます。

勿論、当初の目的・目標は断日数でもかまいません。ですがあなたは、それ以外に人生目標と克服する目的をお持ちになる方が良いと思います。できたら紙にでも書いて、部屋に張りだしてください。克服者の多くが、そういった目標と目的を持って断に励んだ結果、社会復帰を果たしているのです。

目標を持てば、克服に向かう意思がより強固になります。ギャンブル依存症を克服することは最終的な目標・目的ではなく、「あなたが幸せな毎日を送る為に通過せねばならない、必須の通過ポイント」なのです。

しかもそれだけではありません。ギャンブル依存症という試練は、それを乗り越えたとき、それまで以上の進歩と幸せを運んできてくれるのです。(続く)

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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