勝ち負けのギャップで 感情が暴走する

2・巧妙なテラ銭集め

依存症ギャンブラーが 金を失っても借金を重ねてもやり続ける理由 それはテラ銭の集め方が巧妙だからです。(ここでお話しする「テラ銭の集め方」とは、パチンコ・スロットにおける演出の多さやゲーム性のことではありません。そのあたりのお話は、後にたっぷりとさせていただきます。)

ギャンブルは、負け続けていても気まぐれにご褒美をくれるものです。依存症ギャンブラーは「勝ち」の甘美さを味わうために、それまで数百万円以上負けていても、滅多に叶わない願望を胸に賭博場へと通い続けます。

「人間はつらい気持ちや 痛みを早く忘れる生き物だ」といわれています。だから毎日のように金を失い続け莫大な借金を抱えていても、たまに大きく勝ったり少しばかり勝ち続けたりすると、「オレは上達した、これからは負けるわけない」などと錯覚してしまうのです。

それともう一つ、依存症ギャンブラーがギャンブルにのめり込む理由があります。それは勝つこと以上に、負けを取り戻したときの喜びと充実感が大きいからです。負けるということは、ギャンブラーにとって一番の苦痛です。負けたお金が大きければ大きいほど、生活に必要なお金であればあるほどダメージは大きくなります。

取り戻すということは負けの苦痛を帳消しにしてくれるだけでなく、おかしな話ですが達成感すら感じさせるものです。そしてそういった経験が積み重なると、依存症ギャンブラーは「取り戻すことが 自分の使命・責任である」ような錯覚に陥り、少しばかり勝つと「そのうちに、これまで負けた分を取り戻せるのではないか?」などと考え始めます。

・損得が生まれるとき 人は感情を暴発させる

ここで少し、あなたの日常を思い出してみてください。お給料を貰うとき、買い物をしているとき、あなたはどういった感情をお持ちでしょうか? おそらくですが、至って平和なものではないでしょうか? 「決まった額のお金を支払って、おつりを受け取る」 そういった時のスマートなお金のやりとりは社会人の証明ともいえるものです。よほどのことがない限り、人は金銭のやりとりに感情を挟みません。

ですが人は、時にお金に対する感情を乱したり暴発させたりすることがあります。それは、何らかの理由で自分や身内が得をしたり損をした時です。例えば、スーパーのレジで受け取ったおつりが少なかったらどうでしょう? ご主人の給料の支給額が、いつもより減っていたらどうですか? 誰だって、文句を言いたくなりますよね。生涯のイベントに目を向けてみると、贈与や遺産相続などの時は揉め事が多いです。その理由は、そういったお金が動く時に「金銭的な損得」が生じるからなのです。

ここで話を元に戻しましょう・・・。日常的に、お金の損得が生じるのはどういった時か? あなたはもうお分かりだと思いますが、それは投資やギャンブルをしている時です。

ギャンブルに依存する人は最初楽しいと思って始め、やがてストップがかからなくなり「これではいけない」と思い始めます。やめられない状況が続くと、今度はギャンブルすることに抵抗がなくなってきます。そしてそれが習慣となり、いつしか「やらなければならない」という義務感に変わり始めるのです。

では、なぜ「やらなければならない」とまで思ってしまうのか? それは、お金の損得に感情が支配されてしまうからです。損をすれば「取り戻そう」と思い、得をすれば「行かなければ損だ」となるわけです。

お金というものは、我々の生活と「心」に大きく関わっているものです。もう一つ言うならば、喜怒哀楽と密接な関係を持っています。そういった性質上、一線を越えてギャンブルやレジャーに使うべきものではありません。ところがギャンブルというものは勝った時と負けたときの感情の差が激しいので、多くの人が使ってはならないお金にまで手をつけてしまうのです。

ギャンブルで勝ったときの高揚感は、他の遊戯どころではありません。ですがその反面、負けたときの罪悪感と悔しさは、他の遊びとは比べようがないほど大きいものです。プラスとマイナスの大きなギャップこそが、人間の感情に火をつけて依存の根を深くし、また容易に克服できない原因を作っているのです。(続く)

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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