・克服の入り口とは
我々が目指すギャンブル依存症の克服について、ここでは、これまでのまとめとして書かせていただきたいと思います。
ギャンブル依存症になると、我々は数々の問題に直面します。それは金銭問題であったり、対人関係であったり、仕事のことであったり、健康面での心配であったり、自らの人格の低下だったりするわけです。そして、「やめようかな…」と考え始めるのですが、ここでキッパリと決断できる人は僅かです。
依存症ギャンブラーの多くは当初、金銭問題に直面してどうにもならなくなり、どちらかといえば依存のことではなく、お金の心配をしているものです。そういった状況の時、殆どの人はお金の悩みが解消すれば問題解決と考え、本気で「断とう!」という気持ちになっていません。
ですがそういった人も、ギャンブルを続けるうちに一層大きな問題に直面し、さすがに「これはまずいな…」と考え始めます。そして、何らかの方法でギャンブルをやめようと試みるのです。
依存症ギャンブラーは数々の問題を起こし、自分ばかりか家族や友人たちにまで多大な迷惑をかけます。多くの場合その原因は、本人が自分がしていることに問題があると感じていないことです。この私もそうでしたが、自分がギャンブルに依存していると知るまでには、かなり時間がかかるようです。しかも、そういった事実に一生気付かない人も居ます。
自らの問題に気付き、何とかしようと考えるのは素晴らしいことです。あなたがここにいらっしゃるのも、きっと「この現状を何とか変えよう!」とお考えだからでしょう。問題に気付くことは、解決への第一歩です。ただし、克服への入り口とはいえません…。
先にも書かせていただきましたが、克服の入り口となるのは、「自らの依存を自覚し、一生やめる覚悟ができたとき」です。そういったマインドが備わっていない場合、たとえ1年間近くの断日数を重ねていてもスリップして再発します。意外にも、「やめよう!」と思って断を始めたとき、まだ入り口の外だったという方が多いのです。
・入り口から克服への道のり
我々は、ギャンブル依存症を克服できるまでの期間、本人の心境に変化が起きていることを知っています。それは、当初我慢であったものが次第に諦めへと変わり、断日数を重ねるうちに「行かない日を過ごすことが日常になる」過程といえます。つまり、次のような変化です。
- STEP1 我慢:断開始から、およそ1ヶ月
- STEP2 諦め:1ヶ月から、1年間くらいまで
- STEP3 行かない日が習慣化:1年から3年
- STEP4 克服:断開始から3年経過
私はこれまでに、多くの克服者の方と実際にお会いする機会が何度かあったのですが、殆どの方が次のように話されてました。また、お礼や報告のメールを頂戴した方々も、同様のことを書かれていらっしゃいます。
- 行かなくても、ストレスがなくなった
- ギャンブルしないのが当たり前になった
- パチンコに行きたいと思わなくなった
- 衝動が起きなくなった
- 金銭感覚が戻った
- 信用を取り戻せた
- お金の悩みから解放された
- 新たな出会いに恵まれた
- 家族とのトラブルがなくなった
- 忙しく、充実した毎日を送っている
- 社会復帰できた
- 友達や恋人ができた
- まっとうな人生を歩めている
- 不安のない人生を送れている
- 人間関係が改善した
今思い起こせば、借金を重ねるだけ重ね明日の生活費さえない状況で我々の元へ飛び込んできた人が、3年後には見違えるようになっているということがよくありました。
パチンコに負けるとリスカばかりしていたPさんは、今現在、ネールアートチェーン店のオーナーです。スロットで全てのお金を使い果たし、最後に残った百円玉を握りしめ泣きながらカレーパン1個で過ごしたKさんは、大手電気量販店の店長になっています。
Tさんは我々とつながったとき、駆け出しの板前でした。お店を何度もサボってパチンコに行き、クビ寸前で覚悟を決めました。彼は今、業界でもかなり名の通った板前です。家を購入したり、結婚したり、昇進したり、車を買ったりと、克服したことで成功したという話は数え切れないくらい多くあります。
私がこれまで見てきた限りにおいては、依存症ギャンブラーは本来まじめで頑張り屋さんが多いです。ただ、それまでに頑張ってきたのが、ギャンブルという決して良い結果が出ないことだったというだけなのです。
これらの事例が示すように、ギャンブル依存症の克服とは、数々の問題が解決し生活が改善するということです。それでは依存症ギャンブラーにとって、心理的に何がどのように変わったのでしょうか? 私は、ここで「習慣」という物に注目したいと思います。(続く)