エンドレスの借金は なぜ生まれる?

2 ・実を結ばない借入

ちょくちょく目にする言葉で、「借りるのは瞬間 返すのは一生」というものがあります。借金するということは、当然ながらそれと同時に「返済」という義務を負うものです。こんなことは通常大人なら知っているわけで、だからこそ誰もが「当初」は、「バクチなんかで金を借りてはならない」と考えているのです。後で述べますが、この「当初」という部分に、ギャンブル依存症によって金銭問題が深刻になる理由が隠されているのです。

先の記事で私は「欲望に基づく借金は繰り返される」と書きました。今回はまず最初に、その理由をギャンブル依存症に絞って考えてみたいと思います。ズバリ言うならば、ギャンブルが原因で借金した人たちは、「バクチで作った借金など、アホくさくて返せるかよ!」と考えてしまうのです。

では、なぜバクチの借金を返すのがアホくさいのか? それは、借り入れする理由が軽すぎるからです。ギャンブルしても何一つ結果が残らないからです。考えてみれば分かりますが、住宅ローンなら家が残りますしマイカーローンなら車が残ります。教育ローンを組むのも、将来への投資なら割り切れるでしょう。ところがギャンブルが原因の借金は、そもそも欲望を満たすために行ったものです。結果は何も残らないし、その原因ともいえる浪費は将来の投資にもなりません。

実を結ばない借金をしたいとは、誰も思いません。ましてや、繰り返したいと願う人などいるわけがないでしょう。ところがギャンブルが原因の借金には、手を染めやすく、また一度手を出すと連鎖しやすい特徴があるのです…。

・エンドレスの借金は なぜ生まれる?

ここで、ギャンブルによる借金の特徴についてお話ししましょう。通常のローンに比べギャンブルでの借金は「当初」元金が少ないです。誰だってギャンブルして金がなくなったとき、100万円なんて大金の借り入れはしませんよね。生まれて初めてギャンブルで借金したときの状況について、私はいろいろな方に質問させていただいたことがあります。その項目の中で、最初の借入額として一番多かった答えは「10万円」というものでした。逆に10万円以上だった人は、たったの1人でその額は15万円だったことを申し上げておきましょう。(サンプル54名中)

質問させていただいた数名の方から直に話を伺いましたが、ギャンブルの借金というものは、当初少ない金額の借入だから手を出しやすいと聞きました。ですがその反面、誰もが「もう二度としないぞ!」とか「バクチなんかで借金するのは、これが最初で最後だ」とか「まあ10万円くらいだから、すぐに返せるさ」などと考えているそうです。確かにいくらサラ金からの借金だとしても、元金が10万円なら返済する額もしれています。

ところが、「少額から借り入れがスタートする」という部分に、大きな罠が隠れているのです。住宅ローンやカーローンなどは、最初から借入額が決まっている借入です。ですがギャンブルが原因の借金というものは、誰もが「これが最後だ!」と念じてはいるものの、実際は元金がどんどんと膨らむので確定していないも同然です。そういった厳しい現実は、経験した人なら誰でも知っているはずです。

つまりギャンブルが原因の借入は、エンドレスになるリスクを抱えているということです。このことは、リピート率が高いということでもあります。しかもギャンブルによる借入は、負債者が堕落して生活能力を低下させることから、焦げ付きやすい借入だともいえます。

これは簡単にいうと、「債務者がギャンブルに依存して生活の糧を失い、返済不能になる」ということです。だからこそギャンブルが原因で借入をすると生活不安に陥り、借金地獄から抜け出すことができなくなるといわれているのです。

・まとめ

  1. ギャンブルでの借金は目的と額が決まっていないに等しく、そういった性質上返済に気合いが入らず、なおかつズルズルと続けてしまう傾向があるといえます。
  2. また、最初に借りる額が少ないため手を出しやすく、どんどんと膨らんでいくというリスクを抱えています。

そういったことが背景となって、ギャンブルが原因でサラ金に手を出して多重債務者に転落したり、一家が離散したり、家計が破綻したりといった例が後を絶ちません。犯罪の動機がギャンブルによる借金であることも多く、その害は計り知れないといえます。

しかも依存症ギャンブラーは、「借金があるからこそ、ギャンブルから抜け出せない」という、「逆説ともいえる地獄のループ」に陥りやすいのです。(続く)

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
詳しい情報は、次のリンクをご参照ください。
AMAZON著者ページ