これからの時代 ステルス値上げが我々の生活を圧迫する

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本日から、商品やサービスの価格表示を消費税込みの「総額表示」とすることが義務化された。この総額表示というのは、いわゆる税込価格であり、「本体価格」に消費税分を加算した価格表示がなされるということである。

簡単に一言で説明すると、「これからの値札は、全て税込みになりまっせ」ということである。

この総額表示については各企業によって、対応が様々である。例えばユニクロとGUは、3月12日(金)から全ての商品価格を総額表示に変更し、現在の「本体価格(税別)」をそのまま「税込価格」とした。

私はあまり内容に詳しくないが、これは実質9%の値下げになったという。いやー、柳井さん太っ腹やなーと思う。

もっともユニクロほど大盤振る舞いでないにせよ、価格の帳尻合わせのためこれを機に値下げに転じた企業も数多い。

ところがそういった良い話ばかりではない。逆に、これ幸いとばかりにコッソリ値上げする企業も多いようなのである。特に鼻につくのが、ステルス値上げというやつだ。

ステルス値上げとは

ステルス値上げという言葉をご存じない方のために、少しだけ説明させていただこう。ステルス値上げとは、「商品本体の価格は据え置きで、内容量や個数を減らしたり、もしくは原材料の品質を落としたりすることで、消費者にバレにくく値上げする」ことといえる。消費者庁では、このことを「実質値上げ」と呼んでいる。

これまでの代表的な例でいえば、「ブルガリアヨーグルト キットカット 特濃牛乳」などの食料品だが、調味料でも「本みりん 食用油 味噌」などで該当する商品が多い。というよりは、既に大半の食料品でステルス値上げは行われているといえるだろう。

きっとあなただって、「えっ! もしかして、キットカットのサイズ小さくなった!?」などと感じられたことがある筈だ。

ステルス値上げは卑怯な手段

「直接価格を上げず、量を減らしたり質を落としたりすることでコッソリと値上げする」こういったやり方について賛否両論あるかも知れないが、私は大反対だ。値上げするならば、堂々とすればいいじゃないか。こういったやり方は、消費者の目を欺くことが目的の極めて卑劣な手段だ。

名の通った大企業が、こういった卑怯な値上げを平然と行っている。本当に企業倫理さえ疑ってしまう。

ステルス値上げのせいで困ることは意外と多い。一番困るのが、わからないうちに生活を圧迫されているというもの。これを海外では慢性インフレと位置づけ、シュリンクフレーション(Shrink flation)と呼んでいる。まさに、「気がつけば貧困」という惨状である。

実質賃金がここまで下がっている今日、ジワジワと目に見えないインフレの脅威にさらされるのは、徐々に我々国民の生活水準が悪化することに他ならない。

それと、我が家でも痛感しているが、調味料が減るスピードが早い。小麦粉など内容量が一気に250グラムも減ったから、これは大いなるマイナスである。ポテチなども、かなり量が減っているから、ついつい一袋を食べきってしまう。勿論だが、それなりに買い物に行く頻度は増えている。

ステルス値上げはプラスチックごみ増加にもつながっている

一方でステルス値上げは、地球環境にもよろしくない。生産の際に個数が多くなるから余分なエネルギーが必要だし、物流のコストだってパッケージだって増えるに決まっている。

変なパッケージにして、「持ちやすくなって新発売」とか、上げ底にして1割値上げした挙げ句、「食べやすくなって新登場!」などといったメーカーが出てきているわけだから、これも見過ごせない問題だろう。

買い物に行く頻度が多くなれば、我々消費者だって無駄なエネルギーを消費する機会が多くなる。ステルス値上げは、消費者にとっても地球環境にとってもマイナスなのである。

これまで、「円安だ 史上空前の景気だ 株式市場バブル以来の高値だ」などといった報道がなされて来たが、一向に景気の回復感はない。感じ方は人それぞれだろうが、おそらく30年という景気の氷河期に加えて、今新たに新型コロナという隕石が降ってきたに等しい。

そんな状況の中、自社への批判をかわしたり不景気感を匂わせないよう努めたりするためにステルス値上げを行うのは大変よろしくない。殆どの消費者は、買い物のときにいちいち内容量まで確認しない。そんな我々の「信頼と安心」を裏切り、卑怯な手段で利益を上げることは許されるべきでないだろう。

政府も生活必需品の値上げに対して、もっと指標を増やすなどして、ステルス値上げに対する規制を強化していただきたいものである。(奥井 隆)

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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