第1章 依存する本当の理由

2・これまで知られなかった「依存する本当の理由」

普通に生きていれば、誰でも毎日のように新しいことを経験します。素晴らしい想い出を残すことができます。一生の出会いに恵まれることだってあるでしょう。ですが依存症ギャンブラーは、そんな貴重な時間の大半を「賭博場」という特殊な空間で過ごしています。そこで気まぐれなリーチや大袈裟な演出に一喜一憂し、「賭ける」という行為を繰り返しているだけです。彼らはそこで毎日、途方もなく大きな金と時間を、単調な作業だけの為に費やしているのです。

しかも賭博場はいつも、お金にまつわる妬み嫉み僻みで満たされているところです。犯罪の温床であり、絶えず争いが起きている場所でもあります。なぜなら、「他人のことを顧みず ただ己の利益のみ考える」というのがギャンブルで損をしないための鉄則だからです。そんな場所で生活の大半を過ごしている人がどのような運命を辿るのか、多く語る必要はないでしょう。

平日のパチンコ店を覗いてみればわかりますが、そこに温もりはありません。ギャンブラーたちは誰かと会話するわけでもなく、ただ黙々と機械の前に座り続けています。そこで彼らがしていることといえば、うつろな目で電動ハンドルと握手するか、それともコインを入れてレバーを叩きストップボタンを押すか、そのどちらかです。

ではなぜ依存症ギャンブラーは、そういった場所で延々とお金と時間を使い続けるのでしょうか? 事実この私も、これまでに莫大な時間を費やしました。計算してみると、数年間をパチンコ店という賭博場で過ごしたということになります。人生80年としてそのうちの十数分の一です。これは何とも恐ろしい数字です。

依存症ギャンブラーが依存してしまう理由について、これまでビギナーズラックなどがきっかけになると言われ続けてきました。確かに、大勝ち・小勝ちなどは「きっかけ」ではあるのですが、依存する本当の原因とはいえません。依存するのは、「ギャンブルに、依存を植え付ける仕組みが存在する」からなのです。

依存症ギャンブラーがギャンブルし続ける理由 それは、「時間とお金の殆どをギャンブルにつぎ込まねばならない原因を 自らの手で作りだしてしまう」という事実です。だからこそ彼らは、本来享受すべき喜びや楽しみを放棄してまで、莫大な金と時間をギャンブルのために費やしてしまうのです。

・金を得ても失っても 依存し続ける仕組み

ではその「原因」とは一体何でしょうか? 多くの場合それは金銭感覚の麻痺に基づく金銭問題というものです。次の「依存症ギャンブラーが持つ2つの心理」から、そのプロセスを窺い知ることができるでしょう。よく考えてみれば、依存症ギャンブラーの行動は殆どがこの2つの心理に基づいていることがわかります。

・ギャンブルで得るお金をあてにする
・ギャンブルで失ったお金を取り戻せると思う

「ギャンブルで得るお金をあてにする」とは、金を容易く手に入れようとして溺れる、ということです。また逆に「ギャンブルで失ったお金を取り戻せると思う」とは、大切なお金を失い、悔しさのあまりアツくなるということです。

つまり、これらの行為を交互に繰り返し続けているのが、依存症ギャンブラーなのです。そしてそこに存在するのは、「金を得ても失っても 依存し続ける仕組み」ともいえる落とし穴の存在です。簡単な話、勝てば「また勝てるだろう」と思い、負ければ「次は勝てるだろう」と思うわけです。それらの心理に上記の2つを加えれば、それはもう鉄壁のトラップといえるでしょう。

このように依存症ギャンブラーの気持に火を点けるのは、「金を得ること」と「金を失うこと」しかありません。ですがここで重要なのは、「ギャンブルし続ける者は、金を失い続ける」という事実です。有名な数学者で医者であったジロラモ・カルダーノは、次のような言葉を残しています。

「ギャンブルの最大の利益は それを行わないことでのみ得られる」

ギャンブルというものは営利目的で主催されているものです。だからやり続ける限り金を失い続けて当然です。そしてこのことが、ギャンブル依存症が齎す問題の大きな原因となっています。ではなぜ彼らは、どんどん金が無くなるのにもかかわらず、ギャンブルにのめり込むのでしょうか? (続く)