稼いだ時間で 解決しないこと

2・強固な自覚が必要な理由

「本当の意味での自覚」という部分はとても大切なので、ここで少しおさらいをしておきましょう。ギャンブル依存症を克服するためには、「自分はギャンブル依存症である」と自覚する必要があります。これは、病気になった患者が「自分は病気だ!」と思わないと治療を始めないのと同じことです。

しかしながら「自覚」とはいえ、どの程度まで自覚しているかは人それぞれです。たとえ自覚していたとしても、より強固な自覚が必要となる場合が多いのです。なぜなら中途半端な決意で臨むと、克服していく過程で何らかの原因によりスリップしたり再発したりするリスクが高まるからです。こういったリスクは、「時間的なリスク」と呼んで良いでしょう。

それと同時に「無知のリスク」というものも存在します。実際のところ、ギャンブル依存症が完治すると思い込んでいる方は意外と多いです。少しの期間でもやらないで頑張ることができると、「俺は、もう大丈夫だ!」と勘違いする方がいらっしゃいます。依存の知識が乏しいことが原因で、後々後悔しなければならない方が多いです。

多くの場合、無知のリスクも時間を重ねるとともに遭遇する可能性が高くなります。そういった時間的なリスクと無知のリスクを摘み取ってしまうためには、強固な自覚が必要です。先の章ではそういった強固な自覚のことを「本当の意味での自覚」と呼び、次のように定義しています。


本当の意味での自覚とは、「一生やらない覚悟が備わり、自分がギャンブルしてはならない理由についても、ちゃんと理解できている」ということです。そして もう一ついうならば、「してはならないこと」を知り、ギャンブル依存症について、ちゃんとした知識を持っている必要があるのです。


・克服は 強固な自覚と正しい知識によって支えられている

特に注目していただきたいのは、「ちゃんと」と書いてある部分です。ギャンブル依存症の自覚は、バックボーンに正しい知識が必要であり、そういった部分について「ちゃんと」と私は書いたのです。

そしてもう一ついうならば、たとえ克服まで上り詰めたとしても、再発する可能性がゼロになったというわけではないのです。克服は強固な自覚と、それまでに培った正しい知識によって支えられているといってよいでしょう。

それでは具体的なリスクとしては、どういったものがあるのでしょうか? 私は、依存症ギャンブラーが断を重ねていく過程で、次に書く5つのリスクに遭遇すると考えています。

  1. 時間が経つとともに過信が芽生え、自分を試したくなる
  2. 時間が経つとともに緊張感が失せ、油断する可能性が高くなる
  3. 時間が経つとともに気が緩み、誘惑に乗ってしまう可能性が高くなる
  4. 時間が経つとともに、「自分は、もう大丈夫だ!」と錯覚してしまう「無知のリスク」に遭遇しやすい
  5. 時間が経つとともにストレスに出会う頻度が高くなり、ギャンブルに逃避したくなる可能性が出てくる

いかがでしょうか? よく見れば、全ての項目に「時間が経つとともに」というフレーズが付いていますね。ギャンブル依存症を克服するために、断日数を積み重ねて時間を稼ぐのは必須ですが、時間とともにリスクが発生することも事実です。

つまり、ギャンブル依存症を克服するためには、時間を稼ぐだけでは不十分であるということです。そればかりか、克服していく過程で時間とともに高まるリスクさえあるといえるのです。先にも書かせていただきましたが、断達成日数によってスリップする原因と傾向に違いがあります。よろしければ、以下のリンクを参照してください。

克服の方程式(断3年への道のり)

断ギャンブル日数が短い方がスリップする原因の多くは、金銭管理です。3ヶ月以上断を続けていた方については金銭管理でスリップする確率は低くなるものの、逆にストレスと油断・誘惑が原因でスリップする確率は高くなっているのです。こういった傾向は、現在のSAGSにおいても同じことです。

特に1年を超してスリップしてしまった人の場合、そういった時間的なリスクを排除していなかったケースが多く、ちゃんとした自覚と覚悟・知識がいかに大切か感じざるを得ません。(続く)

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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