ギャンブルによって起きる損失とは

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前回の記事で、少し書き漏れた事があった。それはギャンブルすることによって生じている問題を、どうやって可視化するかということである。それができなければ、自分が依存予備軍かどうかなど判定できないだろう。

問題の明確化

ギャンブルすることによって被る損失は、大きく分けると次の3つになる。

・時間的損失: ギャンブルし続けることにより、莫大な時間を失ってしまう場合が多い。特に日本のギャンブルにおいては、パチンコとスロットがその対象といえる。最近では、オンラインカジノも盛んになっているから、WEBを通してやるギャンブルもそれに該当するだろう。

ここでは単に時間の損失と書いているが、時間にはそれなりの価値が存在する。その端的な例が寿命なのだが、「どのように生きたか?」というのは人生における命題ともいえるだろう。「博打のために生きた」というのが正しい選択だったかどうかは、人生の後半にならないとわかりにくいものである。

・経済的損失: ギャンブルしなければ得られたであろうと予想できる利益と、しなければ失わなくても済んだと考えられる金銭のことである。金銭問題は目立ちやすく生活に直結しているため、クローズアップされやすい。

しかしながら、ギャンブルしている期間のことを考えると、金銭問題が生じている期間が最も短い。なぜなら金銭問題が生じるまでに、ある程度の猶予があるからだ。もう一つ言えば、賭博を繰り返して経済的損失が出ていても、借金がなければ問題視されにくいし、金銭には必ず底が存在するからである。

・能力的損失: ギャンブルしている間に勉強せず啓発もせず、ただ加齢するばかりで他に何も出来ることがなくなってしまうという能力の損失、レベルアップ出来ないということに起因する損失である。

実際にはこの損失がなければ、経済的な損失も時間的な損失もたいしたことではない。だが問題の有るギャンブラーはそういったことをせず、ただただ博打にのめり込んでしまうのだ。

これら3つの損失に分けて考えれば、自分がどういったポジションにいるのか? 問題がどこにあるのかは容易に判断できるだろう。

現在だけの損失と未来に続く損失

先にも書かせていただいた通り、ギャンブル依存症問題については殆どの人が金銭問題にのみフォーカスしている。ところが金銭問題というのは、「借金を返したり生活資金を得たりすることで、一時的に解消する」問題といえる。

ところが時間についてはどうだろうか? 過去に失った時間というのは、絶対に戻っては来ない。なぜなら他の誰かがあなたのために「時間を肩代わりする」などといったことができないからである。それと同時に失ってしまった時間により、別の問題も併せて生じている。

それこそが能力的損失あって、その時点で得られなかった技能や能力というのは、その人自身が過去から未来にわたって引き継ぐ損失である。それを取り戻そうとするならば、また新たに時間を設けて努力するしかない。

まさにギャンブルして時間を失っている人たちは、自らの能力を高める機会を失いつつ命までをも無駄遣いしていることに他ならない。もしもこういった説に異論があるのなら、それまでに失った時間で何ができたか、胸に手を当てて考える必要があるだろう。

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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