「底尽き」など あてにならない

2・底尽きを 待ってはならない理由とは

さて前回私は、「金銭の枯渇が底尽きになるケースは多い」と書かせていただいたわけですが、あなたは疑問に思われたことが、いくつかなかったでしょうか?

  • 「おいおい・・・、金がスッカラカンになるまでダメだっていうのかい!?」
  • 「金がなくなるといっても、また入ってくる場合もあるだろうし・・・ そんなときは、どうなんだ?」
  • 「これじゃ、あんたが言う物理的な集結と同じじゃないか! きっかけとはいえないぞ!」

なるほど。確かに、ごもっともな意見です。実は、私も同感なのです。なぜなら、底尽きというものがそもそも全くあてにならない現象だからです。よく考えてみれば分かりますが、底尽きというのは、そもそも克服できたからこそ「あれが底尽きだった!」と気付く、いわば「過去に生じたきっかけ」ではないでしょうか?

つまり「底尽き」とは未来に向けられたものでなく、過去に向けられた言葉だったのです。「俺の底尽きは、●●だった・・・」などと、思い出し口調でしか語られないのは、底尽きがそういった性質のものだからなのです。

だから、あなたは底尽きをあてになどしてはならないのです。もう一つ言えば、底尽きを期待して待っていても、その「底」がどこかというのは誰にも予想できません。あなたの底尽きが金銭的な破綻なのか? 家庭の崩壊なのか? それとも健康を損ねた挙げ句の生活保護者なのか? 犯罪者なのか? ホームレスへの転落なのか? それを知る方法など存在しないのです・・・。

しかも、往々にして底尽きが無い結末が存在します。ギャンブル依存症の終結は、突然訪れる場合が多いのです。それは依存者の突然死であったり自殺であったり、犯罪による収監であったり、信頼を損ねた結果の失踪である可能性さえあるのです。これらは文字通り、物理的にギャンブル依存症が集結するといったケースです。

底尽きとは、克服してから回想の中で語るべきものなのです。逆にいえば、克服したからこそ底尽きを語ることができるということです。それは期待すべきものでなく、待ち続けるべきものでもありません。

あなたは克服することに全力を尽くし、底尽きを待つといった甘い考えを捨てるべきなのです。では本当の意味で、あなたが立ち直るために必要な「きっかけ」とは一体何なのでしょうか? 結論から申し上げるならば、そのきっかけはあなた自身が作るべきなのです。

・必要なのは底尽きでなく「底上げ」

先ほど私は、「底尽きを期待して待っていても、その「底」がどこかというのは誰も予想できるものではありません。」と書きました。とことん落ち続け、落ち場所がどこなのかわからないというのが、ギャンブル依存症の怖さといえるでしょう。

そう考えて、ひょっとしたらあなたは恐怖感に襲われたかもしれません。確かにあなたがギャンブルすることをやめなければ、この先どこまで落ちていくかというのは未知数だといえるのです。

ですが、ここでひとつあなたに良いことをお教えしましょう。それは、あなたが経験する底は、あなた自身で決められるということです。そして最善の選択とは、たった今から一切のギャンブルを断つということです。そうすれば現在の状況が、「あなたの底」として確定するのです。

つまり何のことは無い、底尽きなどというものは全く必要なかったのです。なぜなら、あなたが決断するその瞬間が未来には、「あなたの底」となるのですから。といいましょうか、底尽きなど経験せず避けるというスタイルがBESTなわけです。

「あなた自身が決断して、自らの底を決める」これは決して、底尽きではありません。あなたが自身の手で行った「底上げ」なのです。ギャンブルを断った瞬間から、あなたの転落は止まります。底尽きはあてになりませんが、底上げともいえる克服への努力は、あなた自身を救ってくれるのです。

たとえスリップを繰り返したとしても、決して諦めないことです。ギャンブル依存症を克服しようと志したときから、あなたは自分が転落する穴を浅く埋めることができるのです。どうかこのことを、良く覚えておいてください。(第2章終わり)

 

 

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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