・価値観の違いが破滅につながる
ここで依存症ギャンブラーのマインドについて考えてみましょう。彼らと健常者の考え方を比べてみて、一番大きな違いは物事の価値観だと思います。例えば依存症ギャンブラーに、「あなたにとって、一番大切なものは何ですか?」と問えば、その時は「勿論、妻であり家族です」とか「家族と仕事です」とかいうような、まともな答えが返ってきます。
ですが建て前と本音は異なるもので、次のように少し異なる質問をしてみると、徐々に馬脚が現れ始めます。回答者が依存症ギャンブラーならば、全ての質問への答えは「ギャンブル」であるはずです。
- あなたの趣味は何ですか?
- 主なお金の使い道は何ですか?
- どんなときに喜びを感じますか?
- あなたの一番の楽しみは何ですか?
- 普段はどのような生活をされていますか?
つまり健常者と依存症ギャンブラーでは、「生きる目的」という部分で、考え方に大きなズレが見られるのです。依存していない人には多くの目的や目標などが存在するのに、依存症ギャンブラーの脳はギャンブルするという目的に覆い尽くされているといえます。
依存していない人の場合、日常的に喜びや楽しみがいろいろとあります。一方で依存症ギャンブラーの場合は、ギャンブル以外で楽しさや喜びを感じることが少ないです。では依存症ギャンブラーに、次のような質問を投げかけた場合、どのような答えが返ってくるのでしょうか?
- あなたが、今一番にやらなければならないことは何ですか?
・「返済」という最大の使命
おそらくですが、借金を抱えた人ならば、「借金を返してしまうこと」と答えるように思います。つまり、依存症ギャンブラーにとっての最大の使命は「返済」なのです。「返済という使命」への一番の近道は、ギャンブルをやめることなのですが、「生きる目的がギャンブル」である人が借金を抱えてしまった場合、その思考に矛盾が生じるのはあり得る話です。
ギャンブルをすればするほど、借金は膨らみ続けます。一方で、生きる目的がギャンブルで覆い尽くされている依存症ギャンブラーは、ギャンブルする目的の一つに「返済という使命」が加わることで、収拾のつかない地獄のループに陥ります。
つまり…、次のような悪循環です。
ギャンブルで借金を作る →返済という口実でやり続ける →借金が増える→ 返済額も増える →一層、抜け出せなくなる
多くの金を失って金銭問題が生じると、依存症ギャンブラーは取り戻すという妄想に駆られて賭博場に通います。一方で借金をしたり生活が困窮したりしてくると、ギャンブルでお金を増やそうと考え、金を失う可能性が高いにもかかわらず無謀な賭けに出ます。
そういった状況が続き借金に手を染めたとき、彼らは新たな口実を手に入れます。それは、「返済」という名の義務であり使命なのです。浪費によってもたらされた借金は、ギャンブルという目的に返済という厄介な使命まで与えてしまうのです。
依存症ギャンブラーが陥る地獄のループとは、独特の価値観と金銭に対する錯覚によって生じるのです。(続く)