諦め切るための時間(断1年への道のり)

2・断1年間は 諦めるための時間

断ギャンブル1年間というのは、「ギャンブルしない為の努力をする期間」ということでもありますが、むしろ「ギャンブルすることを諦めるための時間」です。「諦める」と聞くと、ひょっとしたらあなたは「何を諦めるのか?」と思われるかもしれません。ここで少しおさらいをしておきましょう。

ここでいう諦めるというのは、ギャンブルすることを諦めるということです。よく、「私はいつまで経っても、ギャンブルのことを嫌いになれません」とか「いつもパチンコする夢を見てしまいます・・・」とか、「やっぱり、心の中ではスロットが大好きなんです」などとおっしゃる方がいらっしゃいます。

私は、それが当たり前だと思います。いったん好きになった物を嫌いになるというのは、よほどのことが無い限りできないからです。先の章でも書きましたが、この私は今でもパチンコとスロットのことが大好きです。でも今では、行かないことが苦痛でありませんし、パチンコとスロット無しでも楽しい人生を送ることができています。なぜでしょうか?

おそらくその理由は、自分自身でパチンコとスロットを放棄してしまっているからだと思います。戒めであるともいえますが、私の場合それ以上に「手が届かないものだ」という諦めの方が強いのです。ここで少し、私自身のお話をしましょう。

・時間とともに 覚悟と諦めは強固になる

今振り返ると、私にとっての断1年間というものは、「自分がパチンコ・スロットしてはならない人間だ」と心と体に焼き付けるための期間だったように思います。もう一ついうならば、「どうあがいても、行くことができない状況だ」と、苦悩の中で諦め続ける日々の集積でもありました。

頭の中で「パチンコやっちゃならない!」と思っていても、人間の気持ちという物はとても気まぐれです。ちょっとした感情や気分で、すぐに手を出してしまうわけです。パチンコ店の前に立つと、誓いも意思も根性も全て何の役にも立ちませんでした。私はこれまでに少なくとも、15回以上そういった経験をしています。

あのときの自分は、理性や感情などで自らの依存に立ち向かうことができなかったのです。心の力で何とかしようとする試みは、何度も何度も打ち砕かれました。そんなある日のこと、とあることがきっかけとなり、私は自分の心に頼らない方法をとろうと決心しました。それは、金銭と時間の管理を中心に、生活環境と生活習慣を変えることだったのです。

つまり私は心の力に頼ることを放棄し、新しい環境と習慣の中に自分自身を置くことで、問題を解決しようと試みたのです。その結果感じたことは、いかに心の力というものが頼りにならないかということであり、自分が信用ならない人物であるかということでした。

ともあれ1年間行かないことで、私はようやくパチンコとスロットを諦めることができたように思います。そこで初めて知ったのは、自分がギャンブル無しでも生きていける人間だということでした。それまで私は、パチンコとスロットを手放すことが怖くて怖くて仕方が無かったのです。

ギャンブルが無くても生きていけるという自信が付いたということは、とても大きな喜びでした。1年という時間を稼いで、ようやく私はギャンブルを手放す覚悟ができたように思います。

断を志すためには、一生やらないという覚悟が必要です。しかしながら、そういった覚悟も最初の頃は脆弱なものです。だからこそ依存症ギャンブラーは、ちょっとしたことがきっかけでスリップしてしまいます。ですが1年という時間は、諦めと覚悟をより強固なものにしてくれるのです。

ここで私からあなたへ一つアドバイスするとしたら、それはただ一つ。後ろを振り返らず、ただがむしゃらに1年という時間を稼ぐということです。あなたはシンプルに、ただ決められたことを繰り返すだけでよいのです。ここで大切なことは、その「方法」を信じるということです。

教えられた方法で、ひたすらギャンブルしない日々を過ごしてください。あれこれ考える必要はありません。振り返りたければ、それは1年後です。自分がやってきたことが正しかったのか、それとも間違っていたのか? おそらくその時に、結果が出ることでしょう。それまでは、あれこれ考えずひたすら駆け抜けていただきたいのです。

お金と時間との関係を根本から見直し、生活環境と生活習慣を変えることこそが、今のあなたにとって唯一残された方法であるように思います。(続く)

奥井 隆
奥井 隆
2 市民団体 ギャンブル依存症克服支援サイトSAGS 代表
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