保険屋時代 その5

2パチ屋に居続けるなら

今思い起こすと、あの頃のパチ屋には不文律のルールがあった。どんなに不合理なことがあろうと、店側と関係者に逆らってはならないのである。

考えてみれば、いかにも日本人らしいマインドだった。触れてはいけないことには触れず文句はいうな、それが嫌ならば来るなという、今の日本でも十分通用する理屈である。問題は、店の経営者が殆ど日本人でなかったということだ。

そのことを知らなかった頃、ボクは何度かトラブルを経験した。プロに呼び出されて脅されたり、店員に怒鳴られて椅子を振り上げられたり、そりゃ怖い目に遭った。

後に悟ったのだが、あのような場所に毎日出入りするならば、そういった連中とも上手くやれるように「自分を墜とす」しかないのである。つまり、レベルダウンしろということである。

メンツも誇りも捨て、クズのような連中にペコペコしてパチ屋に通う。自分を殺し、レベルを下げ、それでもボクはパチ屋にいることを選んだ。パチンコに依存しスロットに依存していたからである。

モーニングという不合理

古参のメンバーの中で、その店を仕切っている自称プロのSという人物がいた。彼は主婦や高校生に小銭を掴ませて手なづけ、モーニング台のアガリだけで喰っていた。

そしてもう一つ言うならば彼は店長と組んでいたから、どの台にモーニングが入っているか知っていたわけだ。そういった連中に負けずモーニング台をGETするには、ちょっとした知識とコツが必要だった。

モーニングを仕込むには通常、店側が一番左側のリールを器具で固定して早回し機にかけるのだが、ボーナス成立ランプが点灯すると、店員が客に気付かれないよう手でリールを回して絵柄を隠す。そうしないと、いかにもリーチ目らしい絵柄が止まっているので見抜かれてしまうのである。

だが、手で動かしたリールを回すと最初の1回転だけ、少しだけよじれるように回転する。つまりモーニング台を早くGETするためには、コインを1枚投入してリールを1回転させれば事足りる。この方法だと他の連中がリールを停止する前にモーニングかどうかを判別でき、入っていない場合は他の台に素早く移動できるわけである。

また、モーニングが入っている台は、微妙にリールの絵柄がズレていたり、あり得ない組み合わせで絵柄が止まっていたりすることもあった。これらのことを知っていたおかげで、ボクはモーニングにあぶれることは殆ど無かった。だが当然ながら、常連やプロからいつも疎まれる存在だった。(続く)

※一連の記事は、ブログ「ギャンブル依存症克服への道」から抜粋したものです。