カミングアウトの もう一つの効果

2・カミングアウトは「錯覚」からの解放

実はカミングアウトすることによって、他にも大きな効果が得られます。それは、依存症ギャンブラーが持つ独特の価値観・使命感と大きな関係があります。

先の章で書きましたが、依存症ギャンブラーという人たちは独特の金銭感覚を持っています。次の2つが、その代表といえるものです。

  • ギャンブルで得るお金をあてにする
  • ギャンブルで失ったお金を取り戻せると思う

これらの感覚は罪悪感と使命感を伴い、一層ギャンブルに依存する原因を作り続けます。「行きたくない!」と思いながらも借金を重ねて、毎日パチンコ店に通う人たちが居ます。彼らは自らの罪悪感を埋め、それまでに被った損失を何とかしようと思うからこそ、そういった矛盾だらけの行動を取るのです。

ギャンブルは本来遊びなのですが、そういった人たちにとっては既に遊びという存在ではありません。「遊びでしているわけではないから!」という一種独特の錯覚が心の中に存在するのです。

しかもそういった錯覚というのは、ギャンブルがあたかも自分のライフワークであるかのような使命感・義務感を生んでしまうので、ギャンブルするための格好の言い訳となります。このような心理が、行きたくないのにパチンコに通ったり、返済できるわけがない多額の借金を穴埋めしようと考えて通ったりする大きな原因なのです。

カミングアウトは、家族に真実を告げるという行為である反面、そういった偽りの錯覚・価値観と決別できる最大のチャンスなのです。しかも、行かねばならないという妄想との決別を促し、取りもどさねばならないという使命感を喪失させるのです。

実際何名かカミングアウトした方たちに聞いてみると、「ホッとしました」とか「肩の荷が下りました」とか「これで明日からウソをつかないで暮らせると思うと、泣けてきました」などといった感想が聞けました。ですが、何よりも一番多かった感想は次のものでした。

「これで、通わなくても良いと思い救われる気がしました」

もしもあなたが、まだカミングアウトを躊躇っておられるのであれば、問題解決のためにすぐ実行されることをお勧めしておきます。

・家族に報いるため

もっとも、ギャンブル依存症の存在さえ知らず、カミングアウトを言い訳だと言って責める家族さんたちも居られると思います。現に私の両親がそうでした。今考えてみると、それは私にとって最大の「克服の障害」だったと思います。

私の父は私がギャンブルに依存していると話すと、「それは勝手な言い訳だ!」と言って受け入れることがありませんでした。ひょっとしたら今でも心の奥底では、そう感じているのかもしれません。

実際、世間では多くの方たちが、「ギャンブルに依存した人というのは、その人物の素性が原因で堕落した人間だ」と考えられていますし、先天的なものであるなどといった知識さえ流布しています。「ちょっとしたことがきっかけで発病する心の病である」と認識していない方が、殆どではないでしょうか。

ですが依存症ギャンブラー本人が、そういった方たちを説得するということは困難極まりないことだと思います。何しろそれまで、ウソばかりついて借金をしたり家の中のお金を持ち出したりして信用を落とし続けてきたのですから、無理もないことでしょう。

さて・・・ あなたにとって、つらいことを書きましたね。でも、落胆しないでください。私が今あなたにお話ししたいのは、そういった問題を解決するためには少し時間がかかるということなのです。カミングアウトした当初は、つらい思いをされることと思いますが、決してそれに屈しないでいただきたいのです。このことが何よりも大切です。

ここで少し、カミングアウトされる側のことを考えてみてください。何も悪いことをしていないのに、突然身内からそれまでの罪状を告白されるわけです。青天の霹靂(せいてんのへきれき)といっても、決して言い過ぎではないでしょう。

例えば、あなたにカミングアウトされた相手が、乳飲み子を抱えた奥様だったらどうでしょう? 小さな命を育むという人生で一番大切な時期に、あってはならないショッキングな出来事ではないでしょうか? 依存症ギャンブラー本人が担っている責任は、想像以上に重いのです・・・。

そしてもう一つ家族にとってつらいのは、本人と同じように「カミングアウトがギャンブル依存症との戦いの始まりである」という事実なのです。そういった場で感情が渦巻くのも無理ありません。

そういった惨状を乗り越えるための方法は、ただ一つです。それは、あなたがギャンブル依存症を克服するということです。勿論、克服するには時間がかかります。ですが少なくとも、克服に向けて努力する背中を見せてあげることです。あなたが家族に報いる最初の一歩は、安心を与えてあげることだと覚えておいてください。

「あなたの克服・克服する過程こそが、全ての問題を解決へと向かわせる唯一の方法である」ということを、今改めて確認していただきたいと思います。(続く)