イネイブリングとは 「克服させない」ということ

2・イネイブリングとは

先に少しだけ、イネイブリングについて説明しておきましょう。イネイブリングとは、「依存している人物を手助けすることで、返ってその克服・快復を妨げてしまう行為」といえます。ギャンブル依存症におけるイネイブリングとは、「依存症ギャンブラーに、ギャンブルするためのお金を与えてしまう行為」と覚えていただいて結構です。

そういった行為は直接ギャンブルするお金を手渡すというものだけではなく、借金の肩代わりや本人の生活費の負担など間接的な経済的支援も含まれます。なぜなら、そういった間接的な経済支援も、深い部分でギャンブル依存症とかかわっているからです。

例えば借金の肩代わりは、依存症ギャンブラーが返済という義務を果たさない結果を生み、借金を繰り返す大きな原因になっています。本人の生活費や携帯電話の使用料などを負担するというのも、本来生活に使うべきお金がギャンブルに流れてしまう大きな要因となります。

イネイブリングは依存症ギャンブラーがギャンブル依存症を克服する妨げになるばかりか、いつまでたっても自立できない大きな原因になっている場合も多いです。そういった人間関係が存在している限りギャンブル依存症問題は解決しません。

イネイブリングは通常の場合、イネイブラーと呼ばれる人物によって行われる行為であり、本人の妻や家族・恋人などがイネイブラーになっている場合が多いです。そういった人たちに共通するのは、いつまでたっても本人の手を離せないということです。別れることが本人のためにも自分のためにも一番良いことだと理解していても、そうできないというのがイネイブラーの特徴といえるでしょう。

 ・イネイブリングは双方向への依存である

イネイブラーは、依存症ギャンブラーに手を焼く一方で甘やかせます。なぜならイネイブラーは依存症ギャンブラーに依存しているので、ある意味依存症ギャンブラーはイネイブラーにとって自分以上に大切な人物だからです。「自らの努力と献身によって影響を及ぼし、本人がどのように変化するか?」というのが、イネイブラーにとってもっとも関心があり生きる目的にさえなっているのです。

これは先の章でも書きましたが、いわゆる「飼育願望」ともいえるものです。通常の場合、一生懸命世話をすることで、ペットがどのように成長したか見守るというのが飼育者の大きな楽しみです。子育てだってそうですよね。ですが飼育したり育てたりする対象がペットや幼い子供ではなく、歴(れっき)とした大人であるというところに大きな問題があります。なぜなら本来ひとり立ちすべき人が、いつまでたっても自立できず社会への一歩を踏み出せなくなってしまうからです。

イネイブリングというものは、ギャンブルへの依存と異なり一方通行ではありません。よく考えてみてください。あなたがパチンコに依存したとしても、パチンコがあなたに依存することはありませんよね。つまりイネイブラー単独で実行できるという類のものではなく、依存症ギャンブラーとイネイブラーという2人の人間が居て初めて成立する依存関係であるということです。

イネイブラーという人たちは、飼育願望を叶えるため依存症ギャンブラーに手を焼き、自らその人物に依存している人たちです。一方で依存症ギャンブラーはギャンブルするためのお金を得るため、イネイブラーに経済的に依存してしまうということです。

つまりイネイブリングとは、「イネイブラーと依存症ギャンブラーが、双方向で依存することで生まれる悪しき人間関係・依存関係」といえるでしょう。

いかがでしょう? あなたの周囲に、イネイブラーといえる人は居ないでしょうか? もしも心当たりがあるならば、そういった人物との関係を見直さないとギャンブル依存症問題を解決することはできません。イネイブリングとは、いわば「克服させないための方法」なのです。

ですがイネイブラー問題は、あなたにも解決できます。そして、解決のカギを握るのは他ならぬあなた自身なのです。(続く)