日本におけるギャンブル依存症の特徴は、依存者のほとんどがパチンコとスロットへの依存であるということです。
ここでは、依存の対象としてのパチンコ・スロットについて、疑問にお答えいたします。
Q パチンコ・スロットが体に及ぼす悪い影響などはあるのでしょうか?
A たくさんあると思います。
最も悪影響があると考えられるのが、喫煙と副流煙による間接的喫煙です。パチンコ店にいる人々の多くは喫煙者です。そこでプレイする限り、タバコの煙による体への影響を避けることはできないと考えるべきです。
次に問題なのは、店内に流れる大音量の音楽と各機械から出される効果音などです。それと、あまり誰も気にしないように思いますが、パチンコ玉がガラスにぶつかったり賞球が出たりする時に出る音は、驚くほど大きいものです。
そういった音を長時間聞いていると、難聴になったり頭痛に悩まされたりすることになります。
スロットをする人は常にコインを左手に持ってプレイするので、左手が酷使され「スロット肩」と呼ばれる慢性の肩こりに悩まされることもあります。
その他には、不整脈が出たり、高血圧になったり、耳鳴りが止まらなくなったり、パニック症候群になったり、いろいろと体調を崩す人がいるようです。
Q パチンコとスロットでは、遊戯性がかなり違いますね。依存する人のタイプも違うのでしょうか?
A それぞれ、好んでプレイする年代が違います。スロットへの依存者は、若年層に多いです。
スロットはパチンコよりも、若い世代に好まれやすいギャンブルです。パチンコはどちらかといえば、高い年齢層に受けるギャンブルです。
スロットは、狙ってストップボタンを押す必要があります。目押しなどの技術が要るので、どちらかといえば「待つギャンブルではない」といえます。
パチンコはただハンドルを握っていればよいだけですから、このあたりは好みの分かれる部分なのでしょう。
RPGなどが好きな人が依存しやすいのは、どちらかといえばスロットであるように感じます。
Q 具体的に言うと、どういった方法が有効なのでしょうか?
A 我々は「パチンコ依存 スロット依存」に特化した方法として、「断パチ3原則」というものを推奨しています。
・余分なお金を持たない
・時間を持て余さない
・誘惑の芽を摘む
パチンコとスロットに対しては、時間対策が特に有効です。またパチンコ店は市民の生活圏に多数存在するので、プレイできるお金を持ち歩かない工夫も大切になります。
「誘惑の芽を摘む」とうのは、宣伝や新聞チラシ、パチ友などをシャットしてしまおうという方法です。
Q なるほど。そういった仕組みが原因で、依存すると被害が大きいのですね。パチンコ・スロット依存を防ぐために有効な方法は、あるのでしょうか?
A あります。
パチンコやスロットのように時間単位でお金を失うギャンブルは、手持ちのお金と時間を制限することで、通わないようにすることができるのです。
Q それでは1パチや5スロなど安いお店ならば、安心して遊べるわけですね?
A パチンコやスロットは、法律でギャンブルとみなされていませんから、控除率(還元率)についての取り決めもなく、各店によってまちまちです。
ですが実際のところ控除率は、貸玉料金と交換率に左右される傾向が強いようです。一説では「還元率は8割」などと言われていますが、実際はそんなに良くはないでしょう。
貸玉・貸コイン料金が低かったり、交換率が高かったりする店は、還元率を下げているといわれています。貸玉が安い店だからといって、安心だとはいえません。
Q それでは、スロットの場合、どうなのでしょうか? スロットは、プレイヤーがコインを投入してレバーを叩かないと遊戯できないと思うのですが…。
A 現在ホールに設置が許されているマシンは、1プレイの遊戯時間が4.1秒以上と定められており、それ以内ではストップボタンが作動しなくなるようになっています。
ですが殆どの機種は3枚がけとなっているので、コイン1枚が20円だとすると1プレイに60円使うことになります。仮に1プレイ10秒かかったとしても、1時間に360プレイですから、単純に考えても1時間に21,600円使うことになります。
還元率を8割としても1時間当たりに失う金額は4,320円となり、パチンコと大差ありません。しかも慣れてくると誰でも早くプレイするようになりますから、もっと被害が大きくなります。1プレイを8秒でこなす人は、1時間に5,400円失う計算です。
Q なるほど、そうでしたか。パチンコとスロットは安心して遊べるギャンブルですね。
A いいえ、そうとはいえません。
カジノを例にとってみると、カジノに行ってまる1日費やしたとしても、千円しか使わなければ投資額は千円ポッキリです。公営ギャンブルの場合、投資上限額はありませんが、開催日が決まっておりなおかつ1日に行われるレースの回数も決まっていますので、歯止めがかけやすいといえます。
つまりカジノを含め他のギャンブルは、プレイしている時間に関係なくそこで使う金額が問題なのです。カジノ側も、1勝負ごとに投資金額から一定の割合でハウスエッジといわれる手数料を控除しています。これがカジノの胴元が得るお金です。
ところがパチンコの場合、機械の前に座ってハンドルを握り続ける限り、一定の割合でお金を使ってしまうのです。パチンコ台の場合、1分間に100発以下の打ち出し個数と決められています。通常の場合、どこの店も1時間に99発くらいに調整してあります。
貸玉料金が1発4円だとすると、1時間で23,760円使うという計算になります。還元率が80パーセントだとしても、客が失うのは1時間に4,752円です。この調子で3時間やれば、14,256円使う計算になります。1か月に3時間ずつ10日やる人ならば、142,560円ものお金を失うことになりますね。
知らず知らずのうちに、大金を失ってしまうのがパチンコです。しかも最近の機種は大当たりの潜伏演出などが豊富で、やめにくいように設計されています。
Q パチンコと他のギャンブルとの違いについて、教えてください。
A パチンコには、賭ける額に上限があるといえます。
でも他のギャンブルのことを考えてみてください、公営ギャンブルにしても宝くじにしても、投票に使うお金に上限はありませんし、くじを買う枚数に制限もありません。
ですがパチンコとスロットの場合、貸玉・貸コインの料金が前もって決められています。しかも時間当たりに発射できる個数や、プレイできる回数が制限されています。
Q なぜ政治家は、パチンコの状況を黙っているのでしょうか?
A これは想像でしか物を言えませんが、パチンコ業界を糾弾することは彼らにとって、マイナスが多いからだと思います。
パチンコ産業は19兆円もの売り上げを持つ巨大産業であり、マスコミやメディアに対しても大きな影響力を持っています。
政治家がそういった産業を敵に回すことで、いずれ何か自分に不利なことが現実になると恐れるのは無理からぬところです。自らの票田、支持母体に傷がつく恐れさえあるということでしょう。
それどころか、党派を超えた通称「カジノ議連」(国際観光産業振興議員連盟 IR議連)という団体さえあります。この団体は、「カジノ合法化法案の成立を目指し14日に発足する超党派の『国際観光産業振興議員連盟(カジノ議連)』は13日、警察の裁量で換金が事実上認められているパチンコについてもカジノ法案と同じ仕組みで立法化していく方針も固めた。」(2010.4.14 08:22、産経新聞より)と書かれてある通り、ギャンブルを推進するための団体です。現政権では、安倍晋三総理と麻生太郎元総理も、少し前までは最高顧問でした。彼らは国会内で批判され、2014年にカジノ議連から脱退しています。
パチンコのみならずギャンブル産業に対し言いたいことを言えないのは、政治家だけではありません。そういった産業から支援を受けている、依存者支援団体などもそうでしょう。
Q 韓国では、パチンコが全廃になったと聞きましたが…。
A 韓国で禁止になったのは、メダルチギというパチンコとスロットを組み合わせたような遊戯です。
メダルチギは政府高官の汚職問題にも発展しましたし、韓国で比較的歴史が浅い遊戯だったこともあり、そういった事情から早々と全廃できたように聞いています。
日本におけるパチンコ産業とは、いろいろな面で違いがあったと思います。
Q 日本の国から、パチンコ屋をなくすことは可能でしょうか?
A 私自身の考えですが、可能だと思います。
ただし、誰かの力でなくすのではなく、みんなで力を合わせて廃れさせるということでしょう。
長い年月が必要ではありますが、今業界では客離れが大きな問題となっています。こういった事実を見ても、我々市民の意識がいかに大切かわかるでしょう。
Q ある人物は雑誌で、「パチンコとスロットは 負けないように出来ている」と言っていましたが、本当なのでしょうか?
A それは「ボーダーライン」と呼ばれる数字から得られる期待値に基づいて、言っているのだと思います。
パチンコ機はメーカーが大当たり確率を発表するので、交換率をもとに計算すると千円当たり何回転以上回ればプラスの収支になるという数字が出ます。これをボーダーラインといいます。
確かにボーダーライン以上回転する機械を打てば、理論上負けないことになります。ですがホール内でそのような優秀台を見つけるのは至難の業であり、そういった台が存在しないホールも多くあると聞きます。スロットの設定に対する期待値なども、同じようなものです。
理屈では負けないといっても、現実として勝つのは難しいといえます。コンビニなどで売っている攻略誌に書かれてあることを、鵜呑みにしないようにしてください。
Q パチンコとスロットで稼ぐプロがいるのは、本当ですか?
A 少なくなりましたが、本当です。ですが殆どのプロは、まともに生活できないとも聞いています。
Q パチンコの還元率について、教えてください。
A パチンコはギャンブルとみなされていませんから、法律で控除率(還元率)が定められていません。
景品への交換率や出玉率などは各店の裁量に委ねられており、比較的自由です。ですが、釘の調整もスロットの設定も、売り上げ目標を元に行われていると聞きます。
よく「パチンコの還元率は80%」などという話を聞きますが、現実的な数字ではないようです。実際はもっと低いように感じます
Q なぜ今日のパチンコは、ここまで巨大な産業になったのでしょうか?
A 時代時代の節目で、パチンコ産業は緩和され続け、結果としてパチンコは射幸心を煽りやすく、また多くの金を動かすギャンブルに変貌しました。
特にフィーバー機と呼ばれるデジタル機が登場してから、その傾向が強くなりました。それはパチンコの遊戯性が「穴に入れて賞球を得る」というスタイルから、「数字を揃えて 大金を得る」という射幸的なスタイルに変わっていったからです。
チューリップを開かせることに喜びを得ていた庶民は、こういった時代を経て遊戯で得るお金に興味の中心を移していったのです。
Q なぜパチンコ・スロットは、最悪のギャンブルだといわれているのでしょうか?
A それは、主に次の5つの理由からだと思います。
①営業時間が朝から深夜に及ぶ
②学校や病院の近くなど、市民圏に数多く存在する
③視聴覚効果や演出など 依存しやすいゲーム性である
④巧妙な演出などで やめにくいように出来ている
⑤手軽な割に高いレートである
Q なぜ日本では、パチンコ屋のチラシやCMがこんなに多いのでしょうか?
A 時代とともにパチンコ産業は巨大化し、それに伴ってパチンコ産業はメディアにとってなくてはならない広告依頼主となりました。
結果として、球場のフェンスに大手パチンコ店名が書かれていたり、テレビやラジオでパチンコ店のCMが流れたり、新聞の折り込みチラシにどっさりと広告が入っていたりという時代になりました。
Q SAGSとしては、現在のパチンコ問題は今後どのように解決していくべきだとお考えでしょう?
A 現在のパチンコとスロットは、実質のギャンブルでありながら市中で営業を続けています。こういった環境を正すことが、まず一番に必要なことでしょう。
パチンコ産業に圧力をかけて無くすことは殆ど不可能と思えるので、青少年への悪影響などを一番優先して行うべきです。ギャンブルの恐ろしさや、パチンコ依存の現状などを教育の現場でもっと伝えるべきだと考えます。
最近カジノ解禁に向けて議論が活発ですが、もしも日本で賭博を合法化するのであれば、それを機にパチンコ産業を今後どうしていくのかも合わせて考えるべきでしょう。
ただ一番効果的であり、かつ我々でも実現できることが一つあります。それは、我々市民が、パチンコのようなギャンブルに興味を示さなくなるということです。なくすのではなく、廃れさせればよいわけです。
それは時間が解決してくれることではありません。パチンコ産業というのはメディアにとって良い客なので、パチンコに夢中な人が興味を削がれるほど効果的な情報が今後流されることはないでしょう。
我々は周囲の人たちに、パチンコ店の現状とパチンコ・スロット依存の恐ろしさについて、ちゃんと伝えるようにするべきではないでしょうか。そのうえで、パチンコやスロットをしても、お金を失うばかりで人生のプラスになるものは少ないと助言してあげればよいと思います。
市民運動などもいいですが、これは我々が身近にできることなので、どんどん実践していただきたいと思います。
Q それでは実質的なギャンブルではないですか! 違法ではないのですか?
A おっしゃるとおり、実質はギャンブルそのものです。しかし、違法ではありません。
これまでにいろいろな議論がなされ、訴訟なども行われてきましたが、法整備がなされていない現状では違法ではないといわざるを得ないのです。
逆に問題は、そういった悪しき制度を正すことなく、今日まで放置してきた業界・政治家、そして何気なく見過ごしてきた我々市民にあったというべきでしょう。
Q では、ギャンブルでないとして、パチンコ屋で換金ができるのは、なぜでしょうか?
A それはパチンコ店が、3店方式という特殊な方法を用いているからです。
3店方式とは、パチンコ店の敷地内もしくは近隣で古物商登録を受けた業者がパチンコ店に合わせて営業し、客が得た景品を購入する仕組みです。
古物商が景品を買い取ってくれるので、客は勝った金を換金できるというわけです。
Q パチンコとスロット(パチスロ)は、ギャンブルではないのでしょうか?
A 現在、日本の法律ではギャンブル(賭博)とみなされていません。