ギャンブル依存症の克服とは何か、説明させていただきます。
Q ギャンブル依存症の克服とは、どういったことですか?
A 克服とは、依存が治るということではありません。
多くの精神科医が「依存は完治しない病気である」と言っておられます。つまり依存者は、一生自らの依存と向き合わねばならないということです。
ギャンブルを断って苦痛なく過ごすには、強い覚悟と決意、そして多くの時間が必要です。一方で、多くの依存症ギャンブラーは、依存しやすい生活環境で過ごし、好ましくない生活習慣を身につけているので、それを改善していくことも必要です。
ギャンブルと離れ、生活環境と生活習慣を改善していけば、時間が経つとともにギャンブルへの欲求も衝動も減っていきます。そのような期間を積み重ね、苦痛なくギャンブルを断っていられる状態を、我々は「ギャンブル依存症の克服」と呼んでいます。
これまでの経験から我々は、そこに至るまでの時間をおよそ3年前後とみています。克服できた人がスリップ(再びギャンブルに手を染めること)する確率は、かなり低いものです。
Q 克服できたら、現在抱えている問題はすべて解決するのでしょうか?
A ギャンブル依存症が原因で生じていた問題については、おおむね解決すると思われます。
特に金銭問題については、ギャンブルしなくなった時から即改善に向かいます。ギャンブル依存症を克服することで解決する最も大きな悩みは、金銭問題であるといえるでしょう。
Q それでは、克服前と克服後では、何がどのように違ってくるのでしょうか?
A 私は、まずその人の価値観が変わると思います。
それまでギャンブル以外のものに興味を示さなかった人でも、克服する過程で様々な経験をします。
そのことにより生きがいを見つけたり、素晴らしい人々と出会ったり、人生の喜びを謳歌したりできるのです。
ギャンブル依存症を克服していく道のりとは、それまで気づかずにいた素晴らしいものと出会う旅でもあります。
Q 克服した後に、出てくる悩みなどはないのでしょうか?
A 長年ギャンブルに依存していた人などは、克服しても一朝一夕に社会復帰できない場合も多く、ギャンブル依存症が原因の精神疾患や体調不良などにも悩まされます。
体調不良や精神疾患として私の知るものでは、スロットのプロが抱える「スロット肩」やパチプロの「難聴」、パニック症候群などがあります。克服した後も時として、そういった困難に立ち向かうことが必要となってくることでしょう。
勿論、克服=自立=社会復帰というのが理想の姿です。そういったスタイルに近づくためには、生活を安定させ、人間関係を構築し、職場や家庭から逃避しないようになることが大切です。
SAGSは、ちゃんと社会人として自立できることが、ギャンブル依存症の克服であると考えています。
Q SAGSは、なぜ克服が最良の方法だと考えるのでしょうか?
A 先にも書きましたが、自助グループにつながろうと、施設に入所しようと、心療治療を受けるとしても、問題の解決は、「依存症ギャンブラーが 自身で行う」ということだからです。
臨床での効果が見られない現状では、克服するというのが一番確かな方法であると我々は考えます。
Q 克服するために、最初に着手すべきことは何でしょうか?
A まずは、あなたがギャンブル依存症なのかどうか、医師の診断を受けるか、もしくはご自身で判定をしてみてください。
もしも依存であるということになれば、民間の治療施設に入るか、ご自身で快復・克服を目指すか、どちらかになると思います。
Q ギャンブル依存症に効く薬などは、市販されていないのでしょうか?
A 現在、ギャンブル依存症に有効な治療法や治療薬はないといわれています。
Q 私はパチンコが好きでどうにもなりません。そんな私でも、克服できるのでしょうか?
A 大丈夫です。好きな人であっても、克服することはできます。
Q パチンコを嫌いになれば、良いということですね?
A 人間というものは、いったん好きになってしまうと、少々のことではそれを嫌いになることができないように思います。
嫌いになろうとしても、きっとあなたは根負けしてしまうに違いありません。「嫌いになる」というのは、現実的な方法といえません。
Q でも、嫌いになる以外方法はないように思えます…。
A 嫌いになるのが難しくとも、「あきらめる」ということならできると思います。
人間は生きていくうえで、知らず知らずのうちにあきらめていることが多いです。例えば、明日から半年間世界1周旅行に行きたいと思っても、それが可能な人とそうでない人がいます。
といいましょうか、お金や時間の問題で、そういったことを最初からあきらめているのが我々市民です。余程のことがない限り、「明日から世界旅行に行く」などと考えることはないでしょう。
これは最初から叶わぬことだとあきらめているのであって、世界旅行が嫌いだというわけではありませんよね? 誰だって、半年もかけて世界を1周できるのであれば、素敵だと思うことでしょう。
ちょっと話が飛びましたが、この例のように嫌いでなくても、あきらめるということならできる筈です。
Q わかりました。あきらめるということが必要なんですね。それでは現実的に、どうやってあきらめればよいのでしょう?
A あなたが好きなギャンブルのことをあきらめるために必要なことは、2つあります。
1つ目は、あなたがギャンブルをしてはならない理由をちゃんと知ることです。ここで大切なことは、自分自身で「やってはならない理由」を納得できていることです。
2つ目は、断する日数を積み重ね、心身ともにギャンブルのない生活を習慣づけてしまうことです。
確かに最初のころは我慢なのですが、月日とともに我慢があきらめへと変わっていきます。そしてあきらめは、いつしか「やらなくても大丈夫」という自信となり、大きな実りを与えてくれることでしょう。
Q 心だけでなく「心身ともに」とは、どういうことでしょうか?
A ギャンブルへの依存というのは、決して心が依存しているだけではないということです。
例えば、タバコをやめられない方はよく、「口が寂しい」とおっしゃいます。ニコチンという物質への愛着だけでなく、タバコを咥えるという習慣化した行為が重なったものがタバコへの依存だということです。
パチンコとスロットへの依存でも、暇な時間が出来るとソワソワするというのは、心だけでなく体までもがパチンコ・スロットを欲しているという証拠です。そんなときの依存者たちは、まさに体が寂しいのです。
ギャンブル依存症は脳内物質が原因という説もありますが、少なくとも習慣化したギャンブルは心ではなく体に染みつく物です。